こんにちは!HorseCampMongoliaで乗馬を教えているチカです。
モンゴル旅行を計画している方や乗馬ツアーを調べている方から、必ずと言っていいほど聞かれるのが「馬乳酒(アイラグ)」についての質問です。
「馬のお乳を飲むって本当?」「お酒なの?それともヨーグルト?」「ぶっちゃけ美味しいの?」など、未知の飲み物に興味津々な方も多いのではないでしょうか。
モンゴル語で「アイラグ(Airag / Айраг)」と呼ばれる馬乳酒は、私たち遊牧民にとって単なる飲み物ではなく、夏の命を支える大切な伝統食です。
今回は、気になるアイラグの味の正体から、作り方、遊牧民にとっての意味まで、リアルな視点でお話しします!
アイラグ(馬乳酒)ってどんな味?
初めて飲む日本のお客様の感想で一番多いのは、「微炭酸で、ものすごく酸味の効いた飲むヨーグルト」という表現です。
- 酸味:発酵しているため、レモンやお酢のようなキュッとした強い酸っぱさがあります。
- 喉ごし:天然の炭酸ガスが含まれているため、飲むと舌の上にシュワシュワッとした爽快感が広がります。
- 後味:牛乳のような濃厚でまったりとした重さはなく、意外とサラッとしていて後味はスッキリしています。わずかに草原の草のような野生的な香りが鼻へ抜けます。
最初は「酸っぱい!」と顔をしかめるお客様も多いですが、草原で汗を流して馬に乗ったあとに飲むと、この強い酸味と炭酸が身体に染み渡り、不思議と病みつきになっておかわりする方もたくさんいます。
お酒なの?アルコール度数と栄養の話

「馬乳『酒』」という名前がついていますが、実は強いお酒ではありません。
- アルコール度数はごくわずか(約0.5〜3%程度)
酵母の力で自然発酵するため微量のアルコールを含みますが、ビール(約5%)よりもずっと低いです。モンゴルでは大人はもちろん、子どもたちもゴクゴク日常的に飲んでいます(ただし、お酒に極端に弱い方は少しポカポカすることがあります)。 - 草原の「飲むビタミン剤」
野菜がほとんど育たない過酷な草原で、遊牧民がビタミン不足にならず元気に過ごせるのはアイラグのおかげです。ビタミンC、乳酸菌、ミネラル、アミノ酸が豊富に含まれており、腸内環境を整えて夏バテを防ぐ万能の健康飲料なのです。
どうやって作るの?夏の風物詩「搾乳と攪拌」

アイラグが作られるのは、仔馬が生まれて草原が青々と茂る「夏の数ヶ月間」だけです。
- 母馬からミルクを少し分けてもらう
遊牧民は馬の乳を1日に4〜6回、2時間おきに搾ります。まず仔馬に少し乳を吸わせて落ち着かせた後、残りの母乳を人間が分けてもらうのが伝統的な慣習です。 - 皮袋の中でひたすら混ぜる(攪拌)
搾った馬乳を牛革で作った大きな袋(現在は専用のタンクを使う家庭もあります)に入れ、木の棒(ブルール)で何千回、何万回と力強くかき混ぜます。 - 空気を送り込んで自然発酵させる
バシャッ、バシャッと音を立てて空気を送り込みながらかき混ぜ続けることで、乳酸菌と酵母が活発に働き、美味しいアイラグへと仕上がっていきます。ゲルの前でリズミカルに棒を上下させる音は、モンゴルの夏の風物詩です。
遊牧民のゲルを訪ねたときのマナー
乗馬ツアー中に遊牧民のゲルを訪問すると、おもてなしとして大きなお椀にたっぷりのアイラグを注いで差し出されることがあります。
- 右手で受け取る:お椀を受け取るときは、右手で持ち、左手を右肘あたりに軽く添えるのがモンゴルの礼儀です。
- 無理に飲み干さなくても大丈夫:酸味が強くて口に合わない場合は、無理に全部飲む必要はありません。一口だけでも口をつけて味わい、笑顔で返すだけで「おもてなしを受け取りました」という敬意がしっかり伝わります。もし美味しく感じられて飲み干せる場合でも、お椀の底に一口分ほど少し残して返すのが慣習です。

【Q&A】馬乳酒に関するよくある質問
Q. お腹を壊したりしませんか?
A. 豊富な乳酸菌が含まれているため、腸が活発に動き出してお通じが良くなることがあります。普段乳製品でお腹を下しやすい方や、胃腸がデリケートな方は、まずはスプーン数杯や小さなひと口から試してみるのが安心です。
Q. 冬のツアーでも飲めますか?
A. 基本的には夏限定の飲み物です。秋以降は母馬が仔馬を育てるため搾乳を終え、冬の間は作られません。本物の搾りたてアイラグを味わいたいなら、7月〜8月のハイシーズンがベストタイミングです!
馬の命をいただく、モンゴルの文化に触れてみよう
乗馬で大草原を駆けるだけでなく、馬がもたらしてくれる恵みを口にしてみる。それもまた、モンゴルという国の自然と遊牧文化をまるごと体験する素晴らしい機会です。
もし夏のツアー中にアイラグに出会うチャンスがあったら、ぜひ怖がらずに一口チャレンジしてみてください。爽やかな草原の風と太陽の味が口いっぱいに広がりますよ!

